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台本より一部抜粋​

 

 

 

 

赤「(泣き声)」

ママ「……。」

赤「(泣き声ずっと)」

ママ「少し泣き止んで、お願い……どうしろって言うの……ねえ、泣きたいのはこっちよ……っ、私にだって、出来る事と出来ない事があるの、もうやめて……!」

赤「ママ! ママー!」

ママ「もういや……もういや、休ませて、お願い……!」

赤「ママ、ママ、やだ、おっぱい、だっこ、マーマアアア!」

ママ「……もう無理」

赤「ママ、ママ、なんで、行かないで!」

ママ「……すぐ、帰って来るから」

赤「行かないで! 行かないで!」

ママ「少しだけ、一人にさせて……」

赤「ママ!」

ママ「少しだけ……」

赤「(低い声で)行くなあっ!」

ママ「!?」

客「ママア、ママア!」

ママ「あなた……」

客「あああああ嫌だ、ママア、行くな、ママ、ママーっ! なんでえ!」

ママ「……ああ、それが本当のあなたなの」

客「ママ……ママー……!」

ママ「面倒くさい……あとはオーナーに任せるわ……」

客「やだやだやだおっぱい、だっこ、ママ! ママアア!」

ママ「違うわよ。私、あなたのママじゃない」

客「あ……ああ、あああああああああっ! なんでだよお、なんで、俺はこんなに頑張ったんだぞ、褒めろよ! 誰よりも頑張った、誰よりもだ! 身も心もボロボロで、毎日血反吐吐きながら死に物狂いで頑張り続けたんだ! 褒められるべきだろ、なあ!?」

ママ「そう、頑張ったのね」

客「そうだよ! 世界一頑張って、苦労して、努力したんだ! 報われるべきだよな!? 賞賛されて、もてはやされて、俺の全てを肯定して、よくできましたって抱きしめてくれる人が居るべきだろ!? そんな、母親みたいな人がそばに居て、頑張りすぎた俺を癒すのがっ、頑張った分、誰かが俺を慰めるのが道理ってもんだろうが! あんたが俺のママになるべきなんだ! 赤ん坊を愛するみたいに、これだけ頑張った俺を、俺の全てを、受け入れて、褒めたたえて、愛さなきゃいけないんだよお!」

ママ「……あなたが頑張ったのは分かったわ。……で、なんで私があなたのご機嫌取りしなきゃいけないの?」

 

客「あ……?」

ママ「……あなたが私をママにするのは勝手だけど。知らないの? この世には、我が子を殺すママも居るのよ」

 

客「う、うぅう、あ(絶叫)」

ママ「!」

ステ「(殴りかかる声)」

客「ぐぁあっ!」

ママ「ステーキ……」

ステ「痛いなあ……鎖巻いたまま喧嘩するのは苦手だよ……」

客「なんでえ……! ママッ、ママアアア……!」

ステ「君は、赤ん坊になれば、無償の愛がもらえると思ったんだね」

客「だって、頑張ったんだぞ俺は! 誰よりも、誰よりも、誰よりもっ!」

ステ「残念だけど、どれだけ頑張っても報われない人も結構居るんだよ。大人なのに、そんな事も知らないの? まあ、赤ん坊になりたいなら、それくらいの知能で良いんじゃないの。本当に赤ん坊になりたいならだけど……ああ、今更気が変わっても遅いか」

客「ママ……ママ……!」

ステ「赤ん坊なんだろ、二足歩行なんて出来ないよ」

客「うあっ!? な、なん、なんだ、おい、何した!」

ステ「言葉も喋れないね」

客「あゎ、あっ、ぅああーっ、やあああーっ! ああっ、やぅや、あーっ!」(必至に喋ろうとするが言葉にならない感じ)

ステ「意思の疎通はまともに出来ない。伝えたい言葉も伝えられない。行きたい所にも行けない。やりたい事もやれない。全て面倒を見てくれる人がどうするかで決まり、自分は何もする事が出来ない、それが赤ん坊だよ。君がどれだけ可愛い赤ん坊あっても、きちんと面倒が見てもらえるかどうかは誰が親になるかで決まるんだ。……随分分の悪い賭けに出たもんだね。君は、負けたんだよ」

客「ま、ん、まぁ……!」

ステ「ママ、どうするの……」

ママ「……私……あの子を探しに行かないと」

客「!?」

ママ「ああ、どこに行ったのかしら、困ったわね……」

ステ「僕も一緒に探すよ……」

ママ「有難う、ステーキ……」

客「(言葉にならない喚き声)」

ステ「じゃあ、この扉がまた開くのを願ってると良いよ……頑張ってね」

客「(悲鳴)」

ステ「……ママ」

ママ「……ステーキ、あのね」

ステ「うん」

ママ「私、本当にあの子を愛してるの、信じて、本当なのよ……確かに私は駄目な母親だけど、それだけは、お願い……」

ステ「大丈夫だよ、信じてる」

ママ「皆信じてくれないのよ、私が駄目な人間だから……でも、愛してるの、出来るなら、私だって普通の母親みたいに、でも……!」

ステ「ママ。少し休んだ方が良いよ」

ママ「休む……」

ステ「どんな行動をとっても、子供を愛してるならママは良い母親だよ……一回自分の部屋に戻って、休んで。僕がママの子供、探しておくから……」

ママ「……ありがとう……ありがとう、ステーキ……頼むわね」

ステ「おやすみ……」

ママ「(ため息)……! ……シーフ」

シー「赤ん坊の正体見たよ、凄かったね。あんなぶくぶくに太ってる大の大人がオムツ一丁でさ、超キモい! ママ、さっさとお風呂入って体洗った方が良いよ」

ママ「……面倒くさい……」

シー「そう? まあ、僕には関係ないけどさ」

ママ「部屋で休むわ……」

シー「ふうん、おやすみ」

ママ「シーフ、あなたも暇だったら、私の子供探してくれない……?」

シー「うん、いいよ。……もし、生きてるんならね」

ママ「……。」

シー「じゃあね」

ママ「……ええ」

 

 

 

 

客「(すすり泣き)……!」

シー「……。」

客「あ、あっ、ば、ぅ、あっ!」

シー「……親に期待なんかするからいけないんだよ、バーカ。ハハハ、アハハハ」

客「う、うぅぅあああ……!」

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