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「(寝息数秒)……ん……。! ……ねえ……ねえ、起きて。大丈夫? ……うなされてたわよ。…うん……ねえ、本当に大丈夫? 何かあったの? ……そんな事言わないで。私にはなんでも話して。あなたに何かあったなら、それが良い事でも悪い事でも、私にはすごく重要なんだから。……ね、何があったか教えて?

 うん……うん……ああ……んー、そっか……どうして? ……なんて言われたの? ……え? 待って、たったそれだけでそこまで言われたの? ……ああ、そんな……。(痛ましそうに)ああ……可哀そうに、怖かったでしょ? 確かにあなたはミスしたけど、そこまで言われる筋合いないわ。それは絶対に向こうがおかしいわよ。

 ほら、こっち来て。……(ため息)頑張ったわね。うん。あなたはよく頑張った。頑張りすぎなくらい。お疲れ様、もう今日あった事は捨てちゃって良いのよ。その痛みはもうあなたのものじゃない。捨てて良いの。……そう簡単にはいかない? (ため息)そうね、本当嫌な奴だもんね、そいつ。馬鹿でアホで根性が捻じ曲がってて生きる価値なんかない。死んだ方が世の中のためだわ。

 でも安心して。そう言う奴には必ずバチが当たるから。ええ、神様は見てるの。行いは全て自分に返って来るものよ。今までだってそうだったでしょ? 前にあなたに恥をかかせたクラスメイトはどうなった? 隣の部屋に住んでた騒音おじさんは? 他にも、嫌な奴は結局相応の報いを受けたでしょう?

 ね? だから今回も、何も心配しないで大丈夫。あなたを傷つける連中なんて、そのまま図々しく生きていられるはずがないの。ほら、私の目を見て……。良い? あなたはもう何も心配しなくていい。心配事や悩み事は全部消えてしまうわ。後は全部私に任せて、あなたは休むの。もう頑張らなくて良い。

 ……え? ふふふ、あなたは悪い人なんかじゃないわよ、何言ってるの。ミスをするのは悪なんかじゃない。何かを失敗するのが悪なら、この世には悪人しか居なくなっちゃうじゃない。あなたは良い人よ。とっても良い人。優しくて、誠実で、頑張り屋で、愛情深くて、私にはもったいないくらい素晴らしい人。バチなんか当たるはずない。

 今朝はゴミを出してくれたでしょ。鉢植えに水もあげてくれたし、洗濯物を綺麗に畳んでくれた。この間私の帰りが遅くなった時は、ご飯を作ってくれたわよね。すごく美味しかった。本当よ。あなた料理が上手なの、気づいてた? あなたの手料理が食べられるなんて私は幸せ者だわ。また作って欲しい、疲れてない時にね。

 それに土曜日は、せっかくの休みだったのに頑張って掃除をしてくれたわ。しかもその時、失くしたと思ってたピアスの片方を見つけてくれた。感謝してもしきれないわ、あれ大事なものだったの。ああ、後、先週は廊下の電球を替えてくれたわね。助かったわ。

 買い物に行った時はメニューを一緒に考えてくれるし、記念日を大事にしてくれるし……ふふ、二年前に私の誕生日を祝ってくれた時の事覚えてる? サプライズのために暗がりから飛び出してきた時、私、部屋に侵入してきた不審者だと思って、もう少しで殴っちゃうところだったわよね。あの時はごめんね、サプライズじゃすまないくらいびっくりしちゃったの。

 

 それから、私が見たいって言った映画を借りてきてくれた。お土産に美味しいクッキーを買ってきてくれた。私の髪の匂いを褒めてくれたし、私が何かすると必ず有難うって言ってくれる。いつも目が合うと笑ってくれて……ううん、全然大したことじゃないわ。凄い事なのよ。

 

 誰かのために何かをするって言うのが出来ない人はこの世にたくさん居るの。そう言う人たちはお礼さえ言えないのよ。あなたはそんな人達よりずっと格上の存在なの。人を気に掛ける事が出来るって物凄い才能なんだから。ね? あなたは凄い人なの。こんなにも才能に溢れてる。

 あなたは愛される資格があるのよ。自分ではそう思えないかもしれないけど、でもそうなの。私はあなたを愛してる。本当に、本当に、心の底から、命をかけて。私は全ての不幸からあなたを守ってあげたいの。……ええ、私が守ってあげる。あなたが幸せでいてくれるのが私の幸せ。だから何も心配せず、幸せになってちょうだい。

 

 ……ぼんやりする? 眠くなってきたのよ。もう一度寝ましょう。夢も見ないくらいぐっすり寝て……朝になったら全てが解決してるわ。……ああ、眠る前にこれだけ教えて……あなたを傷つけた奴の名前。……分かった。教えてくれてありがとう。

 

 さあ全身の力を抜いて。何も考えないで。私がそばに居るわ。ずっとずっとそばにいる。どこにも行かないから、安心して今日はゆっくり休んで。おやすみなさい、愛してるわ……。

(マイクから少しだけ離れて(起き上がってベッドの端に移動して腰かけてるイメージ))……もしもし。私よ。今メッセージで名前を送るから、そいつの住所を調べて欲しいの。……ええ、勤め先は分かってる。……ええ、お願い。今送るわ。……届いた? ええ。……家族構成は分かる? ……そう。分かった。

 ……今は寝てる。……そうよ、何されたか聞いたけど本当に酷かった。相当ショックだったのか、さっきまでうなされてたのよ。許せない……。ええ……ええ……分かった。ありがとう。いつも協力してくれて感謝してるわ。……いい、一人で平気。すぐに始末して帰って来る。……ありがとう。また連絡するわ。

 (ため息)……大丈夫。必ず私が、守ってあげるからね……(リップノイズ)」

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