top of page

グランドホテル形式クリスマスモノより、長編につき一部抜粋

​*自分で編集するためSE指定等かなり省いておりますが、実際に納品する場合は分かりやすく指定致します。

12/18日(一週間前)

(家の中、PCに向かうジョーイ。小説を書いている)

ジョ「ハート。それは恐ろしく単純な記号だ。しばしばこの記号は、愛を象徴するものとして使用される。…(考え込む様な小さいため息)こんなちっぽけなマーク一つで、愛の何が分かろうか……(家の奥からガシャーン)…はー……エミリーだな」

(いやいやキッチンまで歩いていくジョーイ)

ジョ「おいエミリー、なにし(息を飲む音)」

 

エミ「ジョーイおじさん」

 

ジョ「あ、う、なん、なんだ、なんだなんだなんだこれ!?」

 

エミ「ホットケーキを焼こうとしたの」

 

ジョ「床の上でか!?」

 

エミ「ひっくり返っちゃった」

 

ジョ「~~っ……はー……雑巾取ってくる……」

 

(キッチンから出て行った途端、ガシャーン二回目)

 

ジョ「!?」

 

エミ「…ジョーイおじさーん!」

 

ジョ「~~~~っ! オーケイ、もう無理だ」

 

(携帯を取り出して電話をかけながら部屋に戻るジョーイ)

 

エマ「はいもしもし?」

 

ジョ「エマ、もう無理だ。これ以上は絶対に、絶対に無理だ!」

 

エマ「どうしたのよジョーイ」

 

ジェ「どうした、エマ?」

 

エマ「ジョーイから電話。今度はどうしたの?」

 

ジョ「やっぱり俺には子育てなんか無理なんだよ」

 

エマ「ああそんな事ないわよジョーイ、貴方は立派にやってるわ」

 

ジョ「家中をひっかき回されて、原稿がちっとも進まないんだ!」

 

エマ「エミリーはまだ五歳なのよ、仕方ないじゃない」

 

ジェ「猿を飼ってると思えよ」

 

エマ「ジェイク!」

 

ジョ「三十過ぎの売れないポルノ小説家が、子供を育てられると思う方が間違ってるんだよ」

 

エマ「貴方しか親族が居ないの、ジョーイ。そんな事言わないで。…両親を亡くしてまだ半年も経ってないのよ、優しくしてあげなきゃ」

 

ジョ「でも物には限度がある」

 

エマ「何かすることで、自分の悲しみを和らげようとしてるのかもしれないでしょ?」

ジョ「床の上にホットケーキミックスをぶちまけてか?」

 

エマ「貴方に焼いてあげたかったんじゃないの? ……ねえジョーイ、エミリーは貴方のたった一人の姪なの。今まで子供と接点のない人生だったかもしれないけど、愛してあげられるでしょう? 貴方のお姉さんの子なのよ?」

 

ジョ「……はー……でも片付けは自分でさせる」

 

エマ「手伝ってあげて。五歳よ、忘れないで、五歳」

 

ジェ「エマ、モーリスがついたよ」

 

エマ「ああ、ジョーイ、悪いんだけどこれから病院なの。ちゃんとやれそう?」

 

ジョ「…頑張ってみるよ、ありがとう」

 

エマ「良かった。また何かあったら電話して」

 

ジョ「分かった。気を付けてな。お腹の子にもよろしく」

 

エマ「ありがとう。じゃあね、バイ。……オーケイ、行きましょ」

 

 

(アパートの外、待機しているモーリスの元へやって来る夫婦)

 

モー「よーう」

 

エマ「ハイ、モー。んーまっ(リップノイズ)」

 

モー「そんなに膨らんでんのにまだ生まれないのかよ」

 

ジェ「エマの中は居心地が良いみたいでね」

 

モー「あー、お前が言うなら間違いねえな、ジェイクww」

 

ジェ「へへへwww」

 

エマ「ちょっと。胎児でも耳は聞こえるんだからね、変な話しないで」

 

モー「悪かったよ、さ、乗ってくれ。頼むからいきなり破水とかすんなよ。タクシー汚したら給料ひかれちまうんだから」

 

 

(病院)

ジェ「どうも、フォーブスです。妻の検診に来ました」

 

看護師「おはようございます。保険証と診察券お願いします」

 

ジェ「はいどうぞ」

 

看護師「座ってお待ちください」

 

コー「あれ…エマ、ジェイク!」

 

エマ「あらコーディ!」

 

コー「どうしたの、予定日昨日だよね?」

 

ジェ「ああ」

 

エマ「生まれるそぶりもないけど。このままお腹の中で育つつもりなのかしら」

 

コー「辛そうだな…車いす持ってこようか?」

 

エマ「大丈夫。今の私が乗ったら、車いす壊れるわよ」

 

コー「アハハ。じゃあ俺行くよ、二人とも、いや、三人とも。失礼、赤ちゃんもいるよな、とにかく、お大事に」

 

エマ「ありがと」

 

ジェ「またな」

 

コー「ああ」

 

(病室。ノック音)

コー「おはようフランク。調子は?」

 

フラ「死にかけてるよ、坊主」

 

コー「元気そうで何より」

 

(軽口を言い合う二人。そこへ本を片手にシェリーが入ってくる)

 

シェ「あら、おはようコーディ」

 

コー「おはようシェリー。新しい本?」

 

シェ「ええ。フランクったら、もうこの間の本を読み終わっちゃったのよ」

 

フラ「お前の世間話より面白いからな」

 

シェ「そりゃあ私の話にスパイや政府の陰謀なんか出てきませんからね。この調子じゃ、病室に本棚を作った方がよさそうだわ」

 

フラ「必要ない。その前に俺は死ぬさ」

シェ「やな人ね! 好きなだけ本でも読んでなさいよ、私はテレビにするわ」

 

フラ「やな女だな!」

 

(テレビの音声)

 

ハワ「クリスマスまで後二週間、ニューヨークはサンタビレッジの様にすっかりクリスマス一色です!」

 

コー「あ…ハワード……(嬉しそうに小さく笑い)」

 

ハワ「全国のご両親、サンタにプレゼントを任せきりじゃいられませんよ。ニュースの後は、今年オープンしたばかりの

巨大おもちゃ屋、カルキンのおもちゃデパート全面協力の元、クリスマスのプレゼント事情を徹底リポート。まだプレゼントを買ってない方は必見ですよ。では一旦スタジオへ返します」

 

スティ「ありがとうハワード。現場のハワード・ブレイズでした。プレゼント特集の後は、ロッドフォード社の社長、アレン・ロッドフォードのスキャンダルをお伝えします…また。今回は警察が出動してないと良いんですがね」

 

 

(おもちゃ屋内部)

AD「ハワード、次の台本」

 

ハワ「ありがとう」

 

AD「カメラそこ置いて!」

 

カメラマン「照明右からお願い」

 

ハワ「店長は? インタビューするんだろ?」

 

メリ「ねえ、ねえってば! あれ、あれ!」

 

同僚「なに、なにっ?」

 

メリ「本物のハワード・ブレイズ! テレビで見るよりかっこいいー!」

 

同僚「どうせゲイよ」

 

メリ「もうっ」

 

ハワ「やあ君たち。調子は?」

 

同僚「ハーイ!」

 

メリ「こんにちは」

 

ハワ「可愛いね、番組用に局が雇った女優?」

 

同僚「(嬉しそうにうふふ笑い)」

 

メリ「ただのバイトです」

 

ハワ「本当? 二人がここで働いてるのがテレビで流れたら、客が急増しそうだな」

 

AD「ハワード、こっち!」

 

ハワ「分かった! じゃ、君たちは普通に仕事しててくれよ。営業スマイルは、忘れずに」

 

メリ「……ゲイだね」

 

同僚「間違いないわ」

 

 

(社長室。テレビを見ているアレン。ノック音)

アレ「どうぞ」

 

レベ「おはようございます社長」

 

アレ「ああ、おはよう」

 

レベ「これが今日の予定です。それで、テーマは?」

 

アレ「テーマ? あー…そうだな、今日の服装のテーマは、若きハンサムな社長」

 

レベ「違うわよアレン、クリスマスパーティのテーマよ。会社の」

 

アレ「ああ、そっちか!」

 

レベ「貴方の服なんか誰も気にかけないわ」

 

アレ「君は気にかける」

 

レベ「人前に出る時はね」

 

アレ「私の服なんか誰も気にかけないよ」

 

レベ「半永久的に貴方のみっともない姿がデータとして保存されるのよ」

 

アレ「あー、私にはいつでも男前でいて欲しいんだな?」

 

レベ「イエスって言ったら髭を剃ってくれる?」

 

アレ「これは私のチャームポイント。それでテーマだっけ? 君の意見は?」

 

レベ「そうね…クラシックなので良いんじゃないですか」

 

アレ「それじゃお祭り騒ぎができない」

 

レベ「配偶者、恋人は連れてきても良い。子供はなし。強いお酒もなし」

 

アレ「なに、レベッカ! 何故私をいじめる!」

 

レベ「貴方のセクハラから女性社員を守るためです」

 

アレ「ならセクハラ相手は君だけにするから」

 

レベ「だめよアレン。貴方を酔っぱらわせるわけにはいかないの。アレグラ社のバクスターさんが来るんだから」

 

アレ「なんで奴をクリスマスパーティに呼ぶんだ、ラードとバターの塊みたいな奴なのに!」

 

レベ「本人の目の前でそう言ったからよ」

 

アレ「……ああ……」

 

レベ「良い、ちゃんとこのパーティで謝ってご機嫌取りしてくれなきゃ、大切な取引先が一つなくなるのよ」

 

アレ「分かったよ、やれるだけやる」

 

レベ「そうして頂戴。じゃあ戻るわ」

 

アレ「私のご機嫌取りは君がしろ」

 

レベ「ならしっかり働いてください。ちゃんと見てるわよ」

 

(出て行くレベッカ。何とも言えない表情で立ち尽くすアレン)

 

アレ「……私も…君を見てるよ」

 

 

メリ「お疲れ―」

 

同僚「お疲れ、メリッサ。気を付けてね」

 

メリ「貴女もね」

 

(道を歩いて行くメリッサ。下着屋の扉が開き、出てくるリック)

 

メリ「?」

 

リッ「ふー……」

 

メリ「……リック?」

 

リッ「わっなに誰!?」

 

メリ「あ、ごめんなさい。メリッサよ。メリッサ・ベアリング。クラスが一緒の……覚えてないわよね、私地味だから」

 

リッ「あ、いや、覚えてるよ。窓際の席だろ? 君、すごくきれいな髪してるから、たまに見とれてたんだ」

 

メリ「本当……?」

 

リッ「ああ」

 

メリ「わお………あ…それで、その……貴方が出てきたお店は…ランジェリーショップだけど」

 

リッ「あー、うん、そうだね、その……」

 

男1「リック! おい、リック!」

 

リッ「やばっ、これ持ってて!」

 

メリ「え、ちょっ……」

 

男1「よー、偶然じゃん!」

 

リッ「よう、まさかここで会うとはね。…やあ」

 

女1「ハアイ」

 

女2「ハイリック」

 

男2「丁度良かった、メール送ろうと思ってたんだぜ」

 

男1「ああ、これからミンディーの家でサッカー部の連中が集まるんだ。お前も来るだろ?」

 

リッ「ああ、もちろん行くよ!」

 

女1「その子誰?」

 

リッ「あ……同じクラスの子。メリッサ、サッカー部の仲間と、チア部の子」

 

メリ「ハイ……」

 

女2「この店の下着買ったの? ちょっとあんたには派手なんじゃない?www」

 

女1「フフフッ! その下着で誰かひっかけたい相手でもいるの?www」

 

リッ「よせよ、誰が何買ったって良いだろ」

 

メリ「あの……私、もう行くね」

 

リッ「あ、メリッサっ!(小声で)ごめん、訳は後で話すから、それ持って帰ってくれ!」

 

メリ「え、でも……!」

 

リッ「明日学校に持ってきて! お礼は必ずするから!」

 

男1「何やってんだよ、行こうぜリック!」

 

リッ「ああ!(小声で)頼んだよ……!」

 

メリ「……なんなの……」

 

 


(扉の開く音。帰ってくるハワード)

コー「ハワード?」

 

ハワ「ああ」

 

コー「お帰り(リップノイズ)」

 

ハワ「ただいま、コーディ」

 

コー「今日のリポート、病室でちらっと見たよ。すごいな、あのおもちゃ屋」

 

ハワ「ああ、子供の津波にのまれるかと思ったよ」

 

コー「ハハ……すぐ夕飯出来るぞ」

 

ハワ「悪い、コーディ。局に戻らないといけないんだ」

 

コー「え? 終わったんじゃないの?」

 

ハワ「いや、資料とりに来ただけ。年末は忙しいんだよ、先に飯食っててくれ」

 

コー「待ってるよ、何時に終わる?」

 

ハワ「分からない、本当に忙しいんだ。明日の原稿もまだ出来てないし…」

 

コー「……そう」

 

ハワ「コーディ……悪いと思ってるよ。でも、仕事なんだ」

 

コー「分かってるよ、俺だってガキじゃない」

 

ハワ「怒ってないか?」

 

コー「怒ってない」

 

ハワ「……分かった。ちゃんと食べて、先寝てろよ」

 

コー「クリスマスは、一緒に居られるよな?」

 

ハワ「約束する。ああそうだ、ついでにお前の姉さんに、社長にインタビューできるようにしてくれって頼んどいてくれ

よ」

コー「電話してみる」

 

ハワ「ありがとう。じゃあ行ってくる、愛してるよ」

 

コー「俺も」

 

(扉が閉まり、静かな部屋。肩を落とすコーディ)

 

コー「はー……」

bottom of page